いびき・睡眠時無呼吸
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● 睡眠時無呼吸症候群の検査・診断は?
◆ 診断 ◆
SASを正確に診断するには、終夜の呼吸モニター検査が必要です。
検査では、脳波・呼吸・血液の酸素飽和度・心電図などを一晩にわたってモニターし、無呼吸の有無や程度を診断します。しかし、今のところモニター検査をできる施設はごく限られており、しかも入院で検査しなければならない施設がほとんどです。
そこで当院ではモニターの検査機械を貸し出しの上、自宅にてデータ測定できる体制をとっています(ただし、脳波の測定は行っていません)。 受診からの流れは、具体的には以下のようになっています。
1) |
受診(images相談)
詳細な問診(これが非常に重要です!!)の後、レントゲン検査・内視鏡検査などで気道のどこが狭くなっているかを調べます。さらに採血を行い、二次性多血症・アレルギー素因の有無・生活習慣病関連の項目(中性脂肪・血糖など)を調べます。 |
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2) |
モニター検査を予定
早ければ、受診していただいたその日に検査が可能です。当日の検査が無理な場合は、検査日の予約を取ります。 |
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3) |
モニター検査
鼻・のどの気流、胸郭の運動、血中の酸素飽和度、心電図などのモニター類を装着の上、終夜にわたって測定します。スクリーニングとして血中の酸素飽和度のみを行う場合もあります(いずれもご自宅にて可能です)。 |
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4) |
治療方針を決定
検査結果をもとに(データの解析に数日かかります)、今後の治療方針を決定します。 |
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最短だと、1度目の受診時に問診・検査を行い、その日の夜に自宅にて夜間の呼吸モニター検査(翌日、検査機器を返却していただきます)。
2度目の受診時には検査の結果を見て治療方針を決定、という具合に極力時間をとらずに検査できるよう考えています。
◆ 検査の実際 ◆
1. 内視鏡検査(受診時)
健常人 |
SAS患者 |
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いびきや睡眠時無呼吸発作が見られる患者さんには、共通して気道が狭くなり易い場所が何ヶ所かあります。その気道の形態を内視鏡を用いて詳細に観察します。
上に健常人とSAS患者の例をあげましたが、この場合、軟口蓋レベルと舌根レベルの気道形態に明らかな差があります。
2. レントゲン検査(受診時)
健常人 |
SAS患者 |
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顔面・頚部の側面のレントゲンを撮影し、気道の開存度を評価します。
SAS患者では、健常人に比べて軟口蓋(のどちんこ)粘膜が肥大もしくは過長で(縦矢印)、また、気道狭窄が顕著な場合が多いです(横矢印)。
3. 採血検査(受診時)
生活習慣病(糖尿病・高脂血症など)のチェック、多血症のチェック、甲状腺機能のチェック、アレルギー素因のチェック、などを必要に応じて行います。ご自身で検診などを受けてみえる場合は、そのデータをお持ち頂けると検査の重複を避けることができます。
4. モニター検査 その1 ・・・・ 酸素飽和度モニター検査(自宅にて)
血中の酸素飽和度・心拍数を一晩中記録する検査で、主にSASのスクリーニングに用います。
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腕時計のようにはめ、センサーを人差し指にはさみます(その後、テープで数ヶ所固定します)。 後は睡眠前・覚醒後にスイッチを押して頂くだけです。 |
検査結果
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小児SAS患者のデータ
上段:血中酸素飽和度 下段:心拍数
周期的に酸素飽和度が極端に低下し(赤矢印)、
それに伴い心拍数も著しく上昇しています。 |
5. モニター検査 その2 ・・・・ 終夜呼吸モニター検査(自宅にて)
酸素飽和度の状態のみでなく、無呼吸の数や程度・いびき音の状態などをチェックします(体位による変化も把握できます)。
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使用する機器の本体は非常に小さく、睡眠の妨げになりません(寝返りもOKです)。本体右側のコードの先端にセンサー類がつながっています。測定は自動的に開始・終了しますので、患者さん自身が機器の操作を行う必要はありません。 |
装着時
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a) |
鼻・のどの気流
鼻の下に貼ったセンサーで気流(呼吸をしているかどうか)を測定します |
b) |
いびきの音
のどぼとけ付近に貼った小型マイクでいびきの音を測定します |
c) |
胸郭または腹壁の運動
腹部に小型のバルーンを固定、バルーン内の圧変化を測定し、胸郭または腹壁の呼吸運動を捉えます |
d) |
血中の酸素飽和度
指の先に酸素飽和度を測定するセンサーをつけます |
e) |
心電図
睡眠中の心電図をとります |
(撮影用に測定機器を見やすくしています。実際の検査時には寝具を着用していただきます。) |
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検査結果 (単純いびき症患者)
口・鼻呼吸および呼吸運動は安定しており、ほぼ一定の振幅で経過しており(吸気・呼気に伴って波形が上下する)、無呼吸は見られません。酸素飽和度も高い値を維持できています。
ただし、気管音は持続的に出ており、単純いびき症と診断されました。
検査結果 (睡眠時無呼吸患者)
口・鼻呼吸が不安定で、気流がほぼ停止している部分と大きな気流の部分が交互に発現しています。呼吸運動は続いているのに気流(口・鼻呼吸)が減少・停止している、すなわち、呼吸をしたくて換気運動をしているのに、気道が狭窄・閉塞するために有効な呼吸ができない状態(閉塞型無呼吸)。
無呼吸の出現に伴って酸素飽和度が著しく低下しています。
また、無呼吸の間いびき音(気管音)は消失し、無呼吸から回復した際の大きな呼吸に伴って大きないびきがみられています。
◆ 検査結果の判定 ◆
● 無呼吸低呼吸指数による重症度分類 |
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1時間あたりの無呼吸低呼吸 < 5回 ・・・・・正常 |
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5回 ≦ |
1時間あたりの無呼吸低呼吸 < 15回 ・・・・・軽症の睡眠時無呼吸症候群 |
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15回 ≦ |
1時間あたりの無呼吸低呼吸 < 30回 ・・・・・中等症の睡眠時無呼吸症候群 |
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30回 ≦ |
1時間あたりの無呼吸低呼吸 ・・・・・重症の睡眠時無呼吸症候群 |
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● 酸素飽和度による呼吸障害の判定 |
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無呼吸・低呼吸状態では有効な換気が出来ず、血中の酸素飽和度が低下します。
酸素飽和度の低下にも色々なタイプがあり、身体への影響もそれぞれ異なります。
最近では、「睡眠時無呼吸の重症度判定には”無呼吸低呼吸指数”よりも”酸素飽和度による判定”の方が優れている」
という考えもあるくらい重要視されている項目です。
データの解析にあたっては、コンピューターの自動解析の結果のみでは不十分で、目視によるマニュアル解析が必須です。
自動解析では無呼吸・低呼吸や酸素飽和度低下の厳密な判定が難しく、正確な解析ができないのです。
実際に、数字上は軽症でも身体への負担がかなり大きい症例も数多く存在します。データの正確な解析・判断ができないと、対処法を間違えてしまうのです。
最終的には、上記の2つの項目に加えて、気道の形態、全身的な要素などを総合して判断する必要があります。 |
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